「この歳になったら、もうお洒落もへったくれもない」……の?
化粧をすれば「妖怪婆」、しなければ「ただの婆」。
それなら妖怪を目指す方が、まだマシ? と、年齢不詳の妖怪婆を目論んでいた50代。
けれども「婆」は「妖怪」よりも強かった。60代になるともうあきません、隠せません。でも、白日の下には晒せないこの辛さ。
後戻りは不可能で、無情にも現状維持すらできない日は続き、それは刻々と深刻さを増していくのであります。
さてどうしましょ? ……観念する?
婆になるのは簡単よ。何もしなけりゃそれで済む。
それとも妖怪婆と呼ばれようと、我が道を行く?
けれども妖怪に至るまでには手間暇かかりそうだし、世間の優しくない目にも晒される。妖怪化への道はそう甘くはない。
それなら中道を行けばいいのよ。普通に薄化粧ね。
ところがどっこい、この普通が薄化粧が難しい。
少々塗りたくったところで、タルミは勿論のこと、シミは隠れず、化粧の効果は無いに等しい。
あれだけ時間をかけたのに、外出先で鏡をのぞけば、努力の甲斐なく……なに、これ……スッピンと変わらないじゃん。
さりとてシミが隠れるほど塗れば、白塗り厚化粧といわれ、数時間後には、シワにはくっきりとスジが入り、ヒビ割れて、全くもって悲惨な状況となり、努力もへったくれもない。
だったら、ポイントメークを目指せばいいんじゃない。色も香りも艶もなくなった老顔に華やぎを! 枯れ顔にパッと花を咲かせましょ! それで目くらまし効果を狙うのじゃ。
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ところが、
「40過ぎたら化粧したって、どういうわけか化粧したように見えないのよ。写真にとると、まるでスッピンに見えるんだから。
だからじゃないの、歳とると、真っ赤な口紅つけたり、グリーンだの何だの変な色のアイシャドウ使うようになるのは」
と、あるラジオ番組で40代半ばの女性が言っておりました。可笑しくも他人事とは思えず笑えず、妙に納得し……。
厚塗り論外、薄塗りはまったく効果なく、化粧しても努力は報われず、また色を使えばゲテモノ……だったら、どうすりゃいいのよ。
化粧は、その意味をなさず、メイクにアップを求める歳はとうに過ぎ、だったらいっそのこと、無駄な抵抗はしない、スッピンで通すのはどうだろうか。
スッピン……どれだけラクになるだろうか、どうせ誰も見ちゃいない。
「この歳になったら、もうお洒落もへったくれもない」それどころじゃない。
老顔・スッピン……「それじゃ、ただの婆じゃない。ただの婆はイヤなのよ」、と妖怪にもなれないくせに生意気を言うアンタ。
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