買い物からの帰り道、隣の奥さんとばったり。
「お出かけ?」と声をかける。
そうなの。でも、さっきまで忙しく動き回っていたから汗かいちゃって。
だからシャワーを浴びて髪も洗ったけど乾かす時間がなくて、
ねっ、髪まだ濡れているでしょ。
でも、いいのよ、自然と乾くから。
確かに奥さんの髪はまだ充分、濡れておりました。
そんなに急いでどこ行くの? ですが、もちろんそんなことは私の知ったこっちゃない。大きなお世話でありましょう。
で、奥さんは言います。
化粧もしないでひどい顔してるけど、自分じゃ見えないからいいのよ。
見せられる方は迷惑だろうけど。
……「うん、そうね」とは言えないおばはん。
こんな時は沈黙は金でいくしかない。
でも、しかし、 あまりのだんまりは肯定につながる。
うーん、なんか言わなくちゃ、ええっと、ええっと……。
ああ、でも、言葉が出てこない。
しかし、奥さんは私の言葉など待たずに、
じゃ、急いでいるから。
と小走りに去っていったのでした。
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うーん、なにか言うべきだっかしら?
でも、考えなしに下手なことを言えない……でしょ。
だったら、
「そうよ、そうよ。他人の目なんか気にしていたら、なんにもできなくなっちゃうわ。人生は一度きり、もう、この歳になったら、お洒落もへったくれもないわよ。残り少ない貴重な時間を、見た目なんかに無駄遣いしちゃいられないわよねー」
とも言えないしね。
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