仕事の関係で最近はこの人と帰りが一緒になることが増えてきた。今日もロッカールームで短い会話。
で、この人のことは以前も書いたことがある。
で、今日は職場のある男性が父親になった、新年早々めでたいね、よかったね、という話から始まり、全然めでたくない子供への虐待の話へと移っていった。
すると彼女がまた突然言う。
私には弟が１人いて、その弟は小さい時、亡くなっているんですけど、子供の頃、その弟を崖から突き落とそうとしたことあるんです。
ええっ、ちょっと、ちょっと、驚かせないでよ。あなたみたいな、純朴、善良、生真面目、いい人が、そういうこと言うと余計に怖いのよ。
【スポンサーリンク】
弟さんは産まれた時から病気で寝たきりだったらしい。だから両親は弟にかかりきりで世話をする。まだ幼かった彼女はその辺の事情が今ひとつ理解できず、両親の愛情を独り占めしているように見える弟を憎むようになっていく。
両親は弟ばかり可愛がって、自分のことはほったらかし、それも弟のせいだ、弟が憎らしい、弟さえいなければ……。
で、ある日、両親が出かけ留守番をしていた彼女は、この小さな弟を乳母車にのせ、家から少々行ったところにある崖の上に立った。
彼女は小学校の低学年くらいだったらしい。非力な小学生でも崖の上から乳母車を押すのはそう難しいことじゃない、でも、できなかったんだね、それで良かったのだけれど、でも、この情景が目に浮かんじゃってね、ちょっと怖かった。
純朴、善良、生真面目、それが中年になっても変わらないという今どき稀有な存在、いい人を絵に描いたような彼女でも、そんな暗い感情に支配されそうになったことあったのね。
人間だもの……色々あらーな。でも……この人を見る目が少し変わったかも。
【スポンサーリンク】
