オババの周りは年寄りばかり。新しい年とはいっても年寄り同士の会話に明るい未来への展望などはなく、話題といえばもっぱら過去へ昭和へと遡るのでした。
で、戻りに戻ったオババは小学生、そんなある日の授業中、当時、まだ結婚して間もない? K 先生が(女性)突然、
「みなさんは、お金と愛、どちらが大事だと思いますか?」
そんなことを言い出しましてね、50年も昔の小学生は純朴そのもの、そんなこと訊かれましても、訳も分からず、ただただポカーンですよ。
先生のこの一言に、クラスは水を打ったように、
しーーーーーん。
(先生、何言ってんだ? どうしたんだ?)クラスの誰もがそう思ったことでしょう。でも、それを言葉にできる勇気ある生徒はいません。
それでも、子供心に、先生、なんか深刻そう、今、きっと大変なんだ、その大変が何なのかはわからないけど、お金のこと? 愛? でも愛って、何……?
その程度の理解はできたでしょうか?
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普段は気の強そうな先生でしたが、その日の先生はなんか元気なく弱々しく見えたものです。その後、先生がどんな話をしたのか授業はどうなったのか、なーんにも覚えちゃおりません。
で、それからしばらくして、K 先生が離婚した、そう聞きました、真偽のほどはわかりませんが。
今なら目に見えるようですね、働かない夫、借金もあったかもしれません。理性では別れるべき、でも、先生にはまだ夫に対する愛が。
それを断ち切ることができるなら、こんなに苦しみはしない、お金か愛か、愛かお金か、ああ、苦しい、ああ、誰か、この胸の内を……。
相談できる人も愚痴をこぼせる人もいない。でも、もう、自分一人では抱えきれない、それで、つい、あの日、生徒の前で……。
多分、そういうことだったのでしょう、今ならね、今、言ってくれたらね、バシッと答えてあげられたのにね。
その後、先生が、別れたことを後悔されてないといいですがね、愛ってやつはそう簡単に割り切れない厄介なところがありますでしょ。
お金か愛か? どちらが大事? 両方に決まってるじゃん。でもね、そうは言ってもね、難しいわね、時代は変わろうが永遠のテーマでもあるわね。
愛かお金か? 両方、持ってないオババは悩むこともないけどね、今は、問答無用の即答で、銭じゃ。かな。
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