長男で、ひと回り近く年上、そんな夫を持つ彼女の、結婚の決め手となったのは?
「頼りになりそう」、末っ子の彼女はそうだったらしい。
あれからン十年、子供は独立し、夫はすでにリタイアの身となった。
以前からその傾向にはあったけれど、リタイア後の夫は、ますます妻に何の相談もせず、何でも勝手にひとりで決めてしまうようになった。
そして勝手にお金を遣い、家事など手伝う素振りさえなく、好き勝手なことばかりしている。
言えば喧嘩になるから何も言わないけど、それをいいことに……。
財布の紐だって結婚当初から今日まで、ずーと、夫が握ったままだ。
そんな夫に腹が立ってしょうがない。
何が「頼りになりそう」だ。何を勘違いしてしまったのか、あーあ、若かかった、そんな自分にも腹が立つ。
ーああ、あの若さ、そして、ああ、この結婚ー
私は、なんて世間知らずのお人好しだったのだろうか……。
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大きく余計なお世話だけど、彼女に言ってあげたい。
大丈夫。人生はまだまだ終わってない、老後はこれから。ダンナに比べりゃ、アンタはまだまだ充分若く、元気でもある。
全てが逆転するのも、そう遠いことではないんでないの、健康で長生きするべし。
ーああ、老後ー
老後などという人生は、若い私の辞書にはなかったのだった。
もし、あの頃、今の私の生活を知ることができたら?
どうしたかな……。
あの時点で? あの頃? あの時? あの年? あの人?
ああ、あの若さ……そんなこと、考えてもしょうがないけど。
わかっちゃいるけど、そうは言っても考えてみたりしてしまうのだ、人間だもの。
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