そう遠くない親戚に生涯独身の女性がおりました。住まいは、その女性の実のきょうだいの家の2階の一部屋。
そこから仕事に行き帰ってくる、そんな生活がン十年。
その家を出たのは50代、それは病のための入院で、そのまま帰らぬ人となりました。
きょうだいの家には、家賃は勿論のこと、水道、光熱費、一切、入れたことはなく、友達も趣味も持たず、旅行も遊びもお洒落もせず、給料は全部、貯金。
ですから相当なものが遺ったことでしょう。が、しかし、住まいを提供してくれたきょうだいにはビタ一文遺しませんでした。
その遺産はどこに行ったかというと、ぜーんぶ、遠くに住む妹に贈ったようです。
住まいを提供し続けたきょうだいとその配偶者は、争うのは嫌だ、それでいい、と何ひとつ要求せず、面倒な後片付けだけが残されました。
なぜ、彼女はそれまでしてお金を遣わなかったのか? なぜ、長年、住まいを提供してくれた、きょうだいの家にはお金を入れなかったのか? 遺さなかったのか?
この女性には女性の、それなりの理由、理屈があったようですが、しかし、それにしても、たった1回しかない人生を、と思わずにいられません。
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もう一人は男性、こちらも生涯、独身。
元・会社員、趣味は「株」。そうしてバブル時代には相当な資産を手にした。で、その頃、そろそろ家でも買おうか、で、男性の兄に相談。
すると、その兄曰く、独り者なんだし、まだこれからも転勤もあるだろうし、家なんか買わなくても、と言われ、そうした。
しかしバブルははじけ、あららら、あれだけ増えた資産は……あれよあれよという間に泡と消え……らしい。
しかし、給料は毎月入る、ボーナスも入る、生活には困らない。ひとり者なので給料もボーナスも好き勝手に遣える。
好きなものを食べ続け、唯一の愉しみ、趣味の「株」も懲りもせずに続け、結果、リタイア時には重度の生活習慣病、そして貯金、ほぼ、なし。
しかし、年金は入ってくる。だから賃貸アパート暮らしといっても、生活に困ることはない。
リタイア後は病院通いと辞めりゃいいのに、まだ「株」だ。そうしてお金は増えず減るばかり。
しかし、やがて認知症の症状が出始めて、ひとり暮らしができなくなった。
そして遠くから親戚がかけつけ、その親戚の近くの施設に入所の手続きをしたらしい。
そして親戚、驚いた? なぜって……。
この男性、生涯独身、定年まで誰でも知っている大手企業に勤めていた。家のローンも子供の教育費もなく、お酒も呑まず、住まいは安アパートで地味な生活。
親戚は、「さぞかし」、と思っていた? らしい。
ところがギッチョンチョン。
その親戚のために、せめて施設にかかるお金だけは、なんとか男性自身の年金で賄えることを願いますが。
ヒトゴトじゃありません。遺す心配は皆無、絶無ですが、それにしても最近はこんな話をよく思い出します。
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