(つくづくしみじみ)
服に、お金を、遣わなくなったわね……。
昔だったら、昔はね─────────────
出た。またか、老婆の昔話。
確かに、お互い、そんな昔もあったわね。
でも、それを言っちゃお終いよ。
昔は昔、今は今。
うーん、それを言っちゃお終いよ。
少し前の老姉妹の会話には、何かと言えば「どうせ、もうすぐ〇ぬんだから」、で、最近は「それを言っちゃお終いよ」
年寄りだって年寄りだって、夢や希望はどこ行った?
【スポンサーリンク】
姉と行くスーパーはいつも同じ、家から一番近い大型店。そこは薬局、介護製品、下着に服に靴、鍋に食器に日用品、化粧品と、生活するには一通りの物が揃っている。
贅沢言わなければ、そこ一軒で事足りる。広いので、普段歩かない姉にはいい運動場でもある。
そしてどこへも出かけることがなくなったこの老姉妹は、最近、そこで服も見るようになった。
普段着、家着しか必要なくなった年寄りにはここで充分。
「それにしても……」「もっとキレイな色はないの? キレイな色」「なんでこんな*#%&$@!しかないの?」
うっさいな、贅沢言うな、こういった色が今のトレンドなの。
キレイ、キレイと仰いますけど、考えてもごらんなさいよ、その老顔に、明度、彩度の高いキレイな色って、どうよ?
いくら好きだって綺麗だって可愛くたって、似合うは別問題だわよ、お値段もそうなのよ。
以前、書いたけれど、最近、私が買ったお安いお洋服だって、大地真央さんがお召しになれば、「ワー、ゴージャス、どこのブランド?」そうなるのよ。
そうね、確かに。でも、それを言っちゃお終いよ、身も蓋もないわ。
【スポンサーリンク】