「老姉は元気です」なに言われてるか、わかったものじゃない

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ー気分だけでも、それなりに、春ー

風の中、散歩にでた。庭で草むしりをしていた A さんと立ち話になった。

久しぶりね。そうね、お変わりない? 元気? 元気よ、すると A さんに「お姉さんは、元気?」と訊かれた。

だから、元気よ、と答えた。

すると A さん、

「それならいいんだけど、ほら、この前、救急車が来たでしょ。かがみさんちの方へ行ったみたいだから、てっきりお姉さんかと思っちゃった」

救急車、そう、そう、そうでした、覚えてます。午前4時半過ぎだったでしょうか。あの日、私は眠れなくて、その時刻もお目目パツチリ。

どんどん近づいてくるピーポー、ピーポーを、この耳でしかと聞いておりました。

どこだ? どこだ? すると我が家の前を通り過ぎ、はい、すぐそばのお宅でした。お年寄りが住んでいますから、こんなこともあるでしょう。

しかし A さんは、その救急車には、私の姉が乗った、と思ったらしい。

何でそう思ったのか?

それは、うちの隣人 B さんのせいだわよ。 

「だって B さんがお姉さんのこと、なんかすごく────」

あのお姉さんは、どこか絶対、おかしい、何か重大な病気が隠れている、とか何とか、そんなことを言ったんでしょ?

「そうなのよ」

隣人 B さんはうちの姉を見ている、言葉も交わしたことがある。で、見たまんま感じたまんまを仲のいい A さんに喋ったのね。

B さんに悪気はないのよ。そう思う気持ちもわかるような……。

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一体全体、姉は元気なのか、そうでないのか、一緒に暮らしてみて、そぐそばで、見れば見るほど、知れば知るほど、わからなくなってきた。

食欲は多少落ちたとはいえ、今でも、私より食べている、そして私より寝ている。

あの日も、熟睡していて、救急車のサイレン音なんて全然知らないと言っていた。

寝酒も毎晩休むことはなく、体調がすぐれないから食べたくない、呑めない、それは聞いたことがない。

でも、全然、元気そうに見えない、健康そうに見えない、それって、どういうこと?

以前、「私は、もう長くないような気がする」「入院したら、もう2度と家に帰ることはできないわよね」そう言った時でさえ、食べたくない、食欲がない、それは聞いたことことがなかったぞい。

フレイル・サルコペニア・ロコモ・骨粗鬆症、もうこうなりゃ何でもどんとこい。

自覚があるのかないのか、本人、この期に及んでも、未だ、焦らず、慌てず、騒がず、動かず、歩かず、何もせず。

うーん、ある意味、老姉、スゴイ! 

この妹、負けるわ、負けてるわ。

そう思い始めた今日この頃なのだった。

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