その顔じゃない・鏡が教えてくれないこと

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「10年前に撮られた自分の顔写真。その時はかなりショックだったわ。

ひどい、正視に堪えない、見たくないと思ったわ。

 でもね、昨日その写真を見たらね、

ずっと、いいじゃない……今に比べたら。

10年てホント、大きいわね、イヤになっちゃう。 

歳はとりたくないわね」

 と、Eさんは化粧室の鏡の前で、化粧をなおし、髪をなでつけ、表情を作りながら、しみじみ言うのでした。

 ホントにね、オバサンの 10 年って、とてもとても大きいわ。でもね、Eさん、それだけじゃないのよ。

がっかりさせて悪いけれど、鏡って鏡って、アテにならないものなのよ。
だから鏡の中の自分を無条件に信じちゃいけないわ。

ほら、ほら、Bさん、その顔、鏡の中のあなたの顔、
その顔じゃないのよ、あなたの普段の顔は。

 

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“女が自ら鏡をのぞく時、女は最高の表情で臨む”

 人はウヌボレ鏡的にしか鏡を見ないし、自分に都合のいい見方しかできないものなのよ。

だからね、鏡のなかの自分にがっかり、なんて、甘い甘い、大甘だわよ。

鏡の中の E さんの顔は、

世間の人が見るあなたの顔より、

それでも、数段アップしてるのよ。

イヤになっちゃう、その顔でも。


ほらほら、そうやって、鏡の前では、口角上げ、目力入れて、無意識のうちに、自分の顔を、作っているでしょ(普段は、もっと緩んだオバサン顔だわよ)。

 ……まぁ、そうは言っても、自分じゃ気がつかないものですわ。

……だから、油断なりませんのよ。でも、誰も教えてくれませんの。誰も、本当のことは言ってくれないんですから。

この思わず目をそむけたくなる、その顔、その姿こそが、他人の目に映る、あなたの真の、お姿。そう思っていれば間違いありませんわ。

  • 見るだけで、さらに 10 歳老けそう証明写真の老顔。
  • 夜の車窓に映る疲れ切った婆顔。
  • ショウウィンドウに映るガニ股歩きのオバサン体形。

 

 久しぶりに、今日は新しい服を買いに行くわよー。と張り切り出かけたまではいいけれど、試着し鏡に映るその姿に、すっかり購買意欲は失われてしもた。

服への購買意欲が失われたら、残るは食欲だわね。

服を買わなかったんだから、の代償行為は当然、食欲を満たすこと。せっかく来たんだから、たまには、美味しいもの食べたってばちはあたらない。さらにその後、デパ地下で散財し、帰宅する準備を整える。

オバサンは、こうして身長が縮む歳になっても、横には伸びていくのだった。

 

いまさら、少々のことでは驚きゃしません、嘆きもしません。
また、がっかりすることもありませんわよ。

10 年後を思えば、まだまだ充分イケてますわよ。