セケンはセケン、ヨソはヨソ。毎日が連休の身には、大型も小型もへったくれもない。
これだけ時間があるというのに、ああ、それなのに毎日、寝不足って、ああ、悲しい。
そして右・上瞼ピクピクは続き、老眼もくたびれちまっているのだ。
書を捨てよ、町へ出よう・寺山修司
青い背広で心も軽く、街へあの娘と行こうじゃないか ♪
『青い背広で』藤山一郎といえば「青い山脈」も好きだわね。明るい気持ちになっちゃってね。酔っぱらって歌うと尚更ね。そうしてよく歌ったものじゃった、どうでもいいけど。
そして、なんの予定もない老姉妹は今日もまた、毎度おなじみスーパーへと繰り出したのだった。
姉とスーパーへ行く日は姉の会計。そして、姉の財布は私が預かる。私は責任重大なのだ。
姉は手ぶらで、杖だけを持って出る。スーパーに着くと今度はカートを歩行器とし、持参した杖はちょっと邪魔に。
姉が「たけのこ」を熱心に見ている。
買うつもりだな。買うのはいいけど、誰が、下ごしらえをするんだよー。
姉はたけのこをカゴに入れた。「小さいのでいいわね」とか何とか言いながら。
「あく抜きは、どうすんの? 糠ついてないけど」と、私。
「皮つきのままレンジでチンすればいいらしいわよ。簡単みたいよ。で、水にさらせばいいんじゃない」
簡単なら、やってくれよ。
そう思うものの、たけのこは食べたし。まっ、いいわ、私がやりましょう。
小さなたけのこ、お値段もそこそこ、失敗したところで姉と私が食べるのだ、まっ、いいわ、テキトーで。
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あっちに寄り、こっちに寄り、そうして広い売り場を半分ほど過ぎた頃、姉が突然、
「あー、あー」
どうしたの?
「あー、あー」
だからどうしたの?
「杖が杖が、杖が……ない」
サービスカウンターにも杖は届いておらず、また広い売り場をあっちへこっちへ戻り、結局、見つからなかった。
ったく、脚、痛いのに、しっかりしてくれよ。
とは思うけど、それを言っちゃお終いよ。お互い様、お互い様、持ちつ持たれつよね。
でも、これが財布だったらどうなるのでしょうか。
私が預かる、姉の財布。もし、失くしたら?
失くさないわよ。
大事なものを預かっているという責任感キリリ、緊張感ピリリ。
ボーーーとなんかしていられませんわよ。
こうして私は、ボーーーとキリピリの間を行ったり来たりして平常心を保ち、姉との暮らしを何とかやり過ごしているのである。
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