恋は遠い日の……サ〇トリーの懐かしいコマーシャルでした。
そして、恋は遠い日の花火となった。
こうして何もかもが過ぎ去っていく。
今や紛うことなき老人となった姉妹は、生き延びるため、生協だけでは足りぬと、この暑い中、食料品の買い出しに出向くのだった。
涼しいスーパーの店内に足を踏み入れ、その涼しさに、ホッと一息。
だのに、姉が、
「ボーッとするね」
「しません」
「この辺で休みたいね」
「座るところもないのに、休めません」
それにしても歳とったり身体が不自由になってくると、大きなスーパーでの買い物は大仕事である。
つい、この間まで、脚に不自由がない時には、大きなスーパーでの店内回遊は楽しみであった。
以前も書いたかもしれないが、旅先でも、現地の市場やスーパー巡りをするのが大好きなのだった。
しかし、今は、正直、しんどい。それは全て、この脚のせいである。
決して、決して加齢のせいではないのである……そこのところ誤解のないように、お願いしますよ。
そこのところ、老姉はどうか? 推して知るべし。
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日曜日、夏休みでもある、夕方でもあった、店は混んでいた。
この老姉妹は自分たちの買い物のことで目一杯であった。
だから、突然、ご近所さんに声をかけられた時は驚いた。
奥さんと、その娘さん、と、その子ども(孫)を連れ、買い物に来ていたのだった。
軽く挨拶と言葉を交わすが、先日の問題にはお互い一切触れない、それが大人のたしなみというものだ。
が、ちょっと気まずい空気が、なのでお互い早々にそれぞれの買い物に戻る。
それにしても……奥さん、痩せた? というより、やつれた? 夏枯れ? お疲れ? なんだか老け込んでしまったような……。
すると姉が、「あの人は、ワタシと、歳、同じくらい?」
などと、とんでもないことを言うのだった。
ちょっとー、それはないでしょ、奥さん、まだ70前よ。
でもね、奥さん、確かに、ちょっとやつれて老けて見えた。
それはきっと家庭の事情のせいかも……外からはうかがい知れない、それぞれの家庭にそれぞれの事情が。
歳とってる、それだけで年寄りは疲れるのですから。それに心労だの肉体疲労だの加わりますと、それはそれは、ガクッときます。
家庭の事情、ガクッ……うちはどうかしら?
しらん、わからん、知りたくない、見ざる聞かざる言わざる、我慢、忍体、そうして何とか平和を保っているのではないでしょうか。
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