見たまんまの男で笑った。でも、30年経ったら…

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<そう言われましても、夢も、加齢とともに歳をとり、すっかり、しぼみました>


昨日の続きみたいですが、仕事に行くとき、職場に向かういつもの電車でなく、逆方向へと走る電車に乗りたい、そんな日はありませんでしたか? 

また突然どうしようもなく旅に出たくなり何もかも放り出し、飛行機に乗りたいー、なんて思うことはありませんか?

でも、いつも思うだけですけどね、まぁ、後先のことを考えたら行動には移せないものです。しかし、もし、もし、もしもですね、自分の命が、もう、もう、もうですね……と考えてしまったら、どうでしょうか。

今から30年ほど前、ちょっとだけ知っている30代・男が、わずか数日? ではありましたが行方不明となりました。

男の勤務先である会社から、出社してこない、無断欠勤・只今・行方不明中と知らされたこの男の家族の驚きはどれほどのものだったでしょうか。

男の実家がある大阪からとるものもとりあえず母親と弟が駆けつけました。

どうした、何があった、息子は兄はどこ行った、当時はまだケータイなどありません、友人もほとんどいない? ちょっと……??? の男でしたから、ただ、帰ってくるのを待つしかありません。

この間、男の住まいであるアパートの部屋に失踪の手掛かりとなるようなものはないものかと、母と弟は部屋に入ることにしました、で、ドアを開けてみます、と……。

ガーーーーーンーーーーーー目の前の光景に………………………母と弟は言葉を失います。

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そこにはゴミゴミゴミのゴミ袋が視界を行く手を塞いでおりました。床はといえば靴も脱げないほどの汚さです。行方不明の息子とその息子の住むゴミ部屋に、母は、もう、ショックで倒れる寸前(?)。

で、そこから後のことは忘れてしまいましたが、無事、男は帰ってきました。で、なんでこんなことになったのか? 無断欠勤して行方知れずとなった原因は? 

男は仕事に行く朝、いつものようにトイレへ、そこで「下血」。男の頭の中は、下血……病……もう助からない……「死」となったようです。その頃、昭和天皇の下血報道が、その影響もあったのでしょうか?

まぁ、とにかく無事でよかった、病気でなくてよかった、笑っちゃ悪い、けど、大いに笑った、呆れた、私ならもう会社に行けない、恥ずかしくて、と思った。でも、この男なら、さもありなん、見たまんまだったね、アンタは! だった。

大企業に勤め、親としてはできのいい自慢の長男だったかもしれません。でも、この一件で、どうなったでしょうか……この兄はもう弟にも頭が上がらないでしょう。

その男も今や60代? 70代? 今頃、どこでどうしているのでしょうか? でも、私も歳をとりました、「下血」で笑っていられない年齢になりました。

最近は加齢のためか、この男の失踪の動機、当時の心境がちょっとわかるような気がしてきましたですよ。

ちょっと、身体が、どこか、いつもと違う? 変? 痛い? となりますと、即、「病」それも「重篤な」、ひょっとして、「死」?

もし、もし、もし、すると病から現実から目をそらしたい、逃げたい、そんな心境に……なるかもしれない、30年前のあの男のように。

でも、身内に、部屋を見られるのは、嫌だな、身内だからこそ、余計にイヤなんだ。見られて困るもの、恥ずかしいもの? そんなものなどありませんが……。

でも、でも、たとえばこのブログとか、大学ノートに書き散らかしたものとか、ああ、嫌だ嫌だ、やはりイヤだ、駄目だ駄目だ、たとえわずかな期間でも行方知れずになど、なっていられないのだ。

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